近距離モチーフのパース・その3(透視図が歪む原因)

透視図法

引き続き、透視図法についての3回目です。
始めましての方は、
ぜひ1回目から読んでいただけると嬉しいです。
(*^^*)

透視図が歪んで見える理由とは

前回、消失点の決め方と
足線法による立方体の描き方について書きました。

その通りに描けば、
その設定での立方体の見え方通りに描くことが出来るはずです。

しかし、
同じ消失点を利用して同じサイズの立方体を描いたつもりでも、
立方体に見えない仕上がりになる場合もあるんです。

それはどういった場合に起きるのか、
図を交えて解説していきたいと思います。

既に描いてある1個は前回に描いたものと同じです。
同じ設定の消失点を利用して
最初の立方体と同じ角度に
立方体がさらに3つ並んでいる、
という状態を想定して描いてみると
どうなるでしょうか?

足線法を使い、
残る3個の立方体も同じように描いてみました。

。。。どう見ても、
少なくとも右側2個は
立方体には見えない気がしませんか???


ちゃんと正しく消失点を決めたはずなのに、
消失点に向かう線に沿って描いているのに、
なぜでしょう?

それは、
「人間の目で自然に見える範囲」
を無視しているから起こる事なんです。


人間の目で自然に見えるのは真正面のみ!

人の視野角は180°という説もありますが、
「視界に入る範囲」と、
「はっきりと見える範囲」
には違いがあります。

例えば、
両手の人差し指を立て、
腕を肩幅のまま真っすぐ前に伸ばして
目の高さまで持ってきてみてください。

指と指の間の距離は
自分の肩幅くらいですね。

そのまま、
顔も目線も左右に全く動かすことなく
真っすぐ前を見たままの状態では
自分の人差し指にピントが合う事は無いはずです。

左右の指にピントが合う場合は、
無意識にせよ
視線をその方向に動かしているから。

視線の方向が変わるという事は、
自分の向きも変わって
画面(PP)の向きも変わるという事なので、
同じ設定のまま
ピントが合うはずのない場所にあるものを
いっぺんに描こうとしても無理が生じるのは当たり前なんです。

近距離では45°が限界

この図の場合、
一番手前のモチーフまでの距離は
70㎝という設定です。
それくらい近いと、
45°くらいの範囲しかはっきりとは見えてないのではと思います。

立点(SP)から画面(PP)までの距離が遠くなれば、
もっと広い範囲が見えるようになります。
平面図にある立方体全部を
自然に見える範囲におさめるためには、
170㎝は離れないと無理なようです。

近いと45°以内だとしても、遠い所を見る場合は
60°くらいまでは見えるようです。
どこまで見えるか多くの人に聞いて回ったことは無いですが
(;・∀・)
私個人の感覚としては、
60°の範囲まで見えるようになるには
2m以上は離れないと無理かな、という印象です。

不自然にならないように設定を決めよう!

立点(SP)から画面(PP)までの距離が違うだけで、
同じものを描いてもこんなに違います。
上は距離70㎝
下は170㎝という設定で消失点を決めて作図したものです。

下の図の方が自然な立方体に見えますね。


描く前に、
「描こうとしている対象物が
自分の目で自然に見える範囲にあるのかどうか」
設定をよく考えてみましょう。
(*^^*)



さらに、同じ設定で決めた消失点を使い
別の位置にも立方体を描いてみました。

正方形や立方体の増殖方法については
検索などで探してみてください。
(;・∀・)
丸投げがちょいちょい出てきます。


同じ消失点へ向かう線上にある立方体のはずなのに、
全く立方体には見えませんよね。


これも、
「自然に見える範囲」を考えてみたら分かります。

上の透視図を
平面図で見るとこういう状態です。

実際の状況を再現すると
こんな感じ。

アイレベルの高さも無理があります。
顔をかなり下に向けないと見えない位置になりますね。
真っすぐ前を向いたままでは
モチーフを見ることが出来ません。

※前々回同様、モチーフの向きは違いますが
多めに見てください。


真上から見るとこれくらいの位置です。
どう考えても
ピントを合わせて見るのは不可能な位置ですね。

透視図の歪みを最低限に抑える方法

先ほどもでてきたこの透視図ですが、
トリミング前だと
これくらいのサイズ感です。

むちゃくちゃ消失点が遠くなってしまいますね。
A3用紙を使っても
1.5㎝の立方体がギリギリ描けるくらいです。

それをモチーフ部分でトリミングしたものが
1こ前の画像になります。

なので、
「広い範囲にあるものを自然に描きたい」ならば、
かなり遠くに消失点を設定して透視図を描き、
必要な部分のみトリミングして使う

というのが良いと思います。

とはいえ、
毎回絵を描くたびに巨大な紙に消失点までの線を長く引きまくる、
というのはちょっと現実的ではないですよね。
(;・∀・)

ですが、
モチーフが小さくしか描けなくても
少なくとも何回かは
自然に見える設定を考えて描いてみて、
「どのくらいの高さ、どのくらいの距離からだと
消失点まで引いた線の角度がどのくらいになるのか」

というのを実感として覚えていくのも必要ではないかなと思います。


スマホ撮影でも考え方は同じ

「真ん中をトリミングする」
という方法はスマートフォンで撮影する場合にも有効です。

スマホ写真はどうしても端が歪みがちですが、
かなり離れた距離から広い範囲で撮影して
中心部分のみをトリミングして使うと
歪みを最低限に抑えることが出来ます。

そしてスマホ(またはカメラ)が上下に傾かないように
真っすぐな状態で撮影した方が
画像が3点透視状態になるのを少し抑えることが出来ます。


絵の資料として写真を用意する場合、
かなり遠くから広い範囲を撮影したものと、
デティールが確認できるような近距離で撮ったものとの
両方を用意するのがおすすめです。




次回では、
「小さく描いた透視図を
形を変えずに拡大する方法」についてご紹介したいと思います。
引き続き見に来ていただけると嬉しいです。
(*^^*)





少しでもお役に立てる部分があれば幸いです。


ではまた♪
(^^)/






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